韓国オンヌリ教会のハ・ヨンジョ牧師は、癌に冒された体を押して、2006年から2010年まで、日本各地で伝道集会「ラブ・ソナタ」を開催し、2011年の8月、65歳で召天しました。私は今夏、その「ラブ・ソナタ」でのハ師の宣教メッセージをまとめた『神が愛される日本を私も愛した』という本を読みました。
反日感情が心に染み付いた韓国人が「日本を愛する」と公に宣言するのは容易なことではありません。今まで、日本人に向けてそのように語る著名な韓国人牧師は何人もいましたが、本国で同胞に向けて語るときや韓国語の著書では、日本批判や反日感情をあからさまに表すのを見聞きして来ました。中には、3・11の大震災に際し、「日本人への神の裁きだ」と発言し、物議をかもした牧師もいました。よほど日本で傷ついたのだろうと、その心情を察することはできます。
そうした牧師たちに比べると、ハ牧師の愛と真実は別格だと思います。私の知るかぎり(個人的な面識はほとんどないのですが)、ハ師には裏表がありませんでした。韓国で聞く説教も、韓国人に向けての著書も、日本人に向けての説教も終始一貫していました。
韓国在留が長く、ハ牧師の身近にいた日本人からも、「韓国の中心的な牧師らが集まった席で、ハ牧師が日本人を称賛する発言をされたのには驚いた」という話を聞きました。
今年、オンヌリ教会が日本にも設立したCGNTVの会議に呼ばれたことがありました。新企画について意見が聞きたいということでした。その席でのCGN韓国人ディレクターの言葉に感動しました。「まず日本人牧師の意見を聞きなさい。韓国か日本かの狭間に立ったら、日本を選びなさい。私たちはハ牧師からそのように命じられ、それを守っています」。
ハ牧師は、「ラブソナタ」でもこう語ったそうです。「日本を赦さず、日本に謝罪を求め続けてきたことを謝罪します」と。私はそれを聞いて、「この方は本気で日本を愛している。いや、実は、母国である韓国を真に愛している牧師だ」と思わされました。