明治学園建学の精神

当教会の2人の方が勤務される明治学院は、1863年ヘボン式ローマ字で知られるヘボンが創設した学校です。その建学理念は黄金律と呼ばれるキリストの言葉「何事でも自分にしてもらいたいことを、人にしなさい」(マタイ7・12)でした。

 ところがこの黄金律、日本の知識人にはけっこう評判が悪いのです。「クリスチャンは他人(他国)に干渉して『余計なお世話』をする。むしろ孔子の『己の欲せざるところ、人に施すことなかれ』のほうが他人に迷惑をかけなくていい」そうです。

 それに対し、明学教授久山道彦氏はこう反論します――「自分がして欲しくないことは、人にするな」という教えは、何をせずとも守っていると言える。「自分にしてもらいたいことを、人にしなさい」は何もしないでは守れない。人に何かを良かれと思ってすることは、人を理解する一歩になる。が、何もしないなら、相手を理解するどころか、関わることさえ避けていることになる。

 「人にするな」という教えは、日本人の消極的な姿勢、他人への無関心、社会への貢献度の低さ、物事の否定的な面や他人の欠点ばかりに目を留める態度、自分は何もしないくせに人を批判するメンタリティを象徴していると思います。道に倒れている人を避けて通ったレビ人と同じです(ルカ10章)。「人にしなさい」は、時に迷惑になる場合があるかもしれませんが、「人にするな」ではいつまでたっても関係はできません。明学出身の賀川豊彦の社会的貢献もマザーテレサの功労も、黄金律なしにはありえませんでした。「人にするな」では、賀川もマザーテレサも生み出せないのです。

  「人にするな」は時と場合によっては大切なこともありますが、「人にしなさい」の教えがあって初めて成り立つ教えです。黄金律から「人にするな」という自覚もおのずから生じます。恐れず実行しましょう。

(2005-05-01)