山形人の謙虚

  「西の京都、東の山形」といえば、漬物のこと。しかし、山形の人は遠慮深く、本当は「東の山形、西の京都」なのですが、山形の人は決してそうは言いません。実際、漬物は山形の方が種類も多く、美味しいのです。京都の紅花商人がもたらした京文化が山形の農村の保存食に過ぎなかったものを文化にまで高めました。しかし、その後は逆に、山形の漬物が京都の漬物に影響を与えてきました。しかし、奥ゆかしい山形の人はそんな事実は絶対に口にしません。でも、もうそろそろ「山形の漬物は日本一」と言っていいのではないでしょうか・・・・
という山形人の提案を、ある東北の地方紙で読みました。

  ううん、それでも言わない方がいいのではないかと、私は思います。やはり、他県人にそのように言ってもらえるまで待つべきでしょうね。自分で言ってしまえば、山形人の謙虚さ、奥ゆかしさに傷がつきます。本当に日本一と信じるなら、黙っているべきです。いつかは誰かが気づいてくれます。

  京都の人は決して「京都の漬物は日本一」とは言いません。京都人が謙遜だからというわけではなく、もう定評があるからです。もし京都人が自らそう言い始めたなら、京都の漬物が日本一から滑り落ちたと不安を感じた時です。自慢したくなるのは不安だからです。謙虚な人は、自分が一番かどうか、人より勝っているかなど気になりません。それゆえ、不安にもなりません。
「何事でも自己中心や虚栄からすることなく、へりくだって、互いに人を自分よりもすぐれた者と思いなさい」(ピリ2・3)。この謙虚さが私たちを平安にします。
  ちなみに私は京都人。山形の漬物も京都の漬物もおいしいと思います。

(2004-7-18)