企業と虚偽

  今、国内4位の三菱自動車が企業存続の瀬戸際に立っています。三菱ふそうトラック・バスの不祥事が相次ぎましたが、今度は乗用車についても欠陥隠しをしていたことが発覚しました。このため三菱自動車への信頼は地に落ち、ユーザーの怒りは頂点に達し、国内新車販売数は昨年に比べ半分以下になってしまったということです。

 最近、伊藤ハムにも同様の問題がありました。ジャスコ店で販売された伊藤ハムを食べた消費者がアレルギーを起こし、ジャスコが調べた結果、ハムに卵白が混入していることがわかりました。ジャスコ側の問い合わせに対し、伊藤ハムは卵白は使っていないと回答しましたが、実際には下請け会社が使っていることが発覚したのです。この虚偽の報告で、ジャスコは店頭から伊藤ハムの製品を一掃する決定を下しました。

 今年冬、浅野農産が鳥インフルエンザ感染による鶏大量死を隠蔽した事件も、記憶に新しいところです。先には雪印、食肉会社も同様の事件を起こしています。

 いずれの場合も、欠陥やミスや感染自体が問題にされたわけではありません。それを隠したり虚偽の報告をしたことが問題にされたのです。欠陥やミスや感染のために企業がこうむる損害は甚大でしょう。しかし、隠蔽や虚偽は、その企業を倒産に追い込みかねません。浅野農産の経営者夫婦も、最初から真実を伝えていれば、自殺にまで追い込まれることはなかったでしょう。

 失敗や弱さは人間につきまといます。その時点では信頼を回復するのは難しくありません。しかし、その隠蔽や虚偽をやってしまえば、もはや信頼回復は困難になります。うそを清算し誠実に生きること、これが人を救います。
「偽りの証言をしてはならない」(第九戒)「主に信頼して善を行なえ。地に住み、誠実を養え」(詩37・3)。この聖書の教えは、人を守り生かす不変の倫理です。

(2004-6-13)