残暑の頃になると太平洋戦争を思い出します。今や終戦記念日は夏の風物詩といっていいかもしれません。今年は終戦60年を迎えます。1894(明治27)年の日清戦争に始まり、日露戦争(1904)、第一次世界大戦(1914)、満州事変(1931)、上海事変(1932)、日華事変(1937)、太平洋戦争(1941)と戦いに明け暮れた日本の50年を思うと、曲がりなりにも無交戦状態を保ったこの60年は奇跡のように思われます。
『日本人とユダヤ人』で知られた故山本七平氏は、『日本はなぜ敗れるのか』の中で、日本はまだ太平洋戦争の反省をしていないと語っています。なぜあんな愚かな戦争を始めてしまったのか。しかも、なぜ支離滅裂で自虐的な作戦を繰り返したのか。なぜ日本人は人間の命を――他国人はもちろん、自国民の命さえも大切にしなかったのか。なぜ自暴自棄になり玉砕を続け、一億玉砕まで走ろうとしたのか。なぜ20世紀の世界で天皇を神だと本気で信じて何百万もの命を犠牲にできたのか・・・本当に不思議です。
「天皇も東条首相もまた大本営の首脳も、何一つ、静かなる自身を持っていなかった。また確固たる思想があったわけでもなかった。・・・(日本は)一つの無目的集団であった」と七平氏は記していますが、確かに日本は今も変わっていないと思います。それどころか、宗教や思想や目的などをもつから戦争するのだという知識人が少なくないので驚きです。
戦争の真の原因は何か。「何が原因で、あなたがたの間に戦いや争いがあるのでしょう。あなたがたの体の中で戦う欲望が原因ではありませんか」(ヤコブ4・1)と聖書は語ります。自分が何者で、何のために生きているのかわからなくなれば、あとは体の中の欲望が狂ったように暴れまわるだけです。真の愛を知らず、人生に目的も確信がもてないがために、自分の欲望をコントロールできなくなってしまうのではありませんか。
敵すらも愛し、十字架で自分の命を犠牲にされたキリストこそ「平和の神」です。