キム・ヨンギ

韓国のキム・ヨンギ(1909生)は、キリスト信仰で「理想農村」を各地に建設した人です。若い頃はずいぶん無鉄砲でした。当時、朝鮮は日本の殖民地下にありましたが、今の朝鮮には独立する力はないと判断した彼は、中国に渡って混乱した中国を統一し、その力で朝鮮半島から日本の勢力を駆逐しようと考えました。わずかな所持金で家を出、日本の官憲の目をくぐって中国に渡ります。命がけでした。無事に国境を越えると、まず朝鮮人牧師に会って、自分の壮大な計画を話しました。話を聞いた牧師は「昼飯をご馳走しよう」と彼を食堂へ連れて行きました。ヨンギの前に出てきたのは、煎り餅の巨大なかたまりでした。「さあ、真ん中から食べなさい。」驚いたヨンギが「こんな大きなものを真ん中からはかじれません」と答えると、「こんな小さな餅をかじれない者が、どうやって中国大陸を統一できるのか」と大声で一喝されました。

  自分の愚かさを悟った彼は故郷に帰り、ひとりで荒廃した祖国の農業の再建に着手します。小さな土地での努力が実り、日本人農学者に称賛されて自信をつけると、聖書に基づいて「理想農村」を建て上げようとしました。それが成功すると、その村を他人の手に渡し、別の村に行って人々をキリスト信仰で導き、また「理想農村」を建設しました。並大抵の苦労ではありませんでしたが、それを繰り返していきました。こうして、彼は祖国再建に貢献し、キリスト者としての品格と功績を内外で賞賛されるようになりました。

 彼が、農業に希望や意欲を失った農民を励ますときに語った言葉があります。

?農業の利潤は小さいというが、実は大きい。たった一粒のモミから1500粒、一粒のゴマからは4〜5000粒の収穫できる。
?農作業は大変だというが、実は力のいらない仕事だ。放っておいても、太陽と雨が作物を育ててくれる(会社勤めで、上司、同僚、顧客の人間関係で苦しむことも、あくせくすることもない)。
?農業は昔から敬意を表されている。偉人は功を成し遂げると、たいてい農業をしたがる。ワシントン、ジャクソン、タイラー、ピアスといった米大統領もそうだった。

 彼は、クリスチャンとしてキリストの恵みの中で生きてきた人です。辛いはずの農業も、恵みの中では一番楽に見えたのでしょう。