マリー・アントワネットの珍言?

フランス国王ルイ16世の王妃マリー・アントワネットは、フランス革命さなかの793年、断頭台で38年の生涯を閉じました。国民が食べるにもこと欠く状態なのに、奢侈な生活をする彼女は「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」と言ったとされます。「浮気女」「息子との近親相姦」「赤字夫人」などと中傷され、国民の間に燃え広がった憎悪を一身に受けての刑死でした。しかし、そうした評判はマリー・アントワネットの実像ではなく、反対派によるデマであったとされます。逆に、彼女は誠実で国民思いでした。貧しい人々を見て、「これまで以上に身をこなして働かなければならない」と記し、衣装を売り宮廷儀式を簡素化し、貧困者のために募金をし、自分の子供にはおもちゃを我慢させていました。
処刑の前日、彼女が国王の妹エリザベートに送った遺書では、「犯罪者にとって死刑は恥ずべきことです。しかし、私は無実なので臆することなく刑を受ける」と述べ、処刑当日も取り乱すことなく毅然と断頭台に歩いて行ったそうです。
「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」というのも彼女の言葉ではなく、ルソーの『告白』に出てくる別の貴婦人のものだそうです(NHK『歴史秘話ヒストリア あの名言にはウラがある!?』151230)。
餓えて、不満と怒りに狂った国民は、誰かを血祭りにあげないと気がすまないのです。現代もそうです。特にネット社会はひどいものです。正しいことを発言しても、捏造や中傷が飛び交い、集中砲火を浴びて炎上することがごく当たり前になってしまいました。残念ながら、日本のキリスト教ネット社会でも、同じようなことが起こっています。
イザヤ53章を思い起こしてください。主イエスも、不満と怒りと血に餓えた群衆の犠牲になられました。「まことに、彼は私たちの病を負い、私たちの痛みをになった。だが、私たちは思った。彼は罰せられ、神に打たれ、苦しめられたのだと」(4節)。本人に直接確かめるまでは、耳や目に入る批判や中傷に動かされないようにしましょう(箴 18:17)。