東京の多摩川に生息する動物たちの生態を追い続けている写真家が、NHK『ダーウィンが来た』で紹介されていました。
秋川が多摩川に合流するトライアングルと呼ばれる川辺には、さまざまな種類の鳥をはじめ、タヌキ、キツネ、アライグマ、イノシシ、イタチが生息しており、それぞれ仲良さそうに共存しています。東京にもこんな所があるのかと、ちょっと嬉しくなります。
しかし、昨年秋の台風19号で、多摩川は大洪水に見舞われ、動物たちの巣は跡形なく押し流され、藪や茂みも消えてしまいました。川の流れも変わり、流木や石が転がる荒れ果てた川原に変貌しました。
さて、動物たちはどうなったか。川辺に向かった写真家は、砂地に足跡やけもの道を見つけて歓喜します。堤防の高みに避難して生き残ったのでしょう。
川原には30か所以上の水たまりができ、そこは生き残った動物たちの水飲み場になり、魚の狩場になっていました。縄張り争いをせず、タヌキとアライグマと並んで水を飲んでいました。まさに恵みの水たまりです。
写真家が設置した10数台のカメラに、最も頻繁に登場したのはタヌキでした。多摩川の川原をあちこち歩き回っているのです。タヌキには、これという取り柄や特技はないそうです。イタチのような俊敏さはなく、川の魚を捕まえるのは苦手です。そこで行動範囲を広げて昆虫などを捕まえ、草の実を食べ、地道な努力で生きているのです。水たまりが干上がりそうになると、タヌキでも魚のご馳走にあずかれることがあります。そこの水は、多摩川の水量に合わせて増減するので、まるで生簀(イケス)です。
まさに「空の鳥を見よ」(マタイ6:26)ならぬ「川原のタヌキを見よ」です。タヌキたちは、大災害の後も、「天の父」の恵みで養われているのです。
コロナウィルスも大洪水のように爪痕を残していくでしょう。しかし、災いだけで終わりません。必ず「水たまり」も残していきます。そして、新たな主の恵みが始まります。私たちはタヌキよりも「もっと優れたもの」(同)ですから。