依存症からの解放

精神疾患を抱える方は、何らかの依存症を合併されていることがあります。アルコール、薬物(市販薬等も)、ギャンブル、買物、性、窃盗、そして最近はゲーム依存症も疾病認定されました。これまで何度か依存症の方と関わる機会がありましたが、全く無力で何も出来ませんでした。依存症の専門医療機関に託すこともしました。奏功したケースは今のところ皆無です。

昨年、薬物依存症の研修会に参加し、そのメカニズムを学ぶ機会がありました。耐え難い苦痛やストレスに晒され続けると、別の苦痛を自らに課して、一瞬でも本来の苦痛から逃れようとします。それが常習化し依存症に繋がるというのです。

こんな実験があります。ネズミを「植民地ネズミ」と「楽園ネズミ」の二つのグループに分けます。「植民地ネズミ」は、一匹ずつ檻に閉じ込め、閉鎖的で孤立した環境に置きます。「楽園ネズミ」は、仲間と自由に過ごせる快適な環境に置きます。どちらのグループにも、普通の水とモルヒネ入りの水を置いたところ、モルヒネ水を選択する率は、「植民地ネズミ」が圧倒的に高かったそうです。

また、依存症として表面化するのは、氷山の一角に過ぎません。水面下には、その何倍も深く大きな問題の山が潜んでいます。そのため、表面化した問題にのみ働きかけても解決しません。

これまで、治療者や支援者は、問題行動を止めさせたり、依存対象へのアクセスを遮断したりすることで、解決を図ろうとしてきました。けれでも、それでは依存対象を変えるだけで、かえって追い詰めてしまうことにもなります。

でも、私は、「からし種ほどの信仰があったら、この山に、『ここからあそこに移れ』と言えば移る」(マタイ7:20)という主イエスの言葉を信じます。主は氷山の一角だけでなく、水面下の巨大な山を氷解させることができます。実は、前述の「植民地ネズミ」を植民地から解放し、楽園に移したところ、モルヒネ水を手放したそうです。

教会はこの世の「楽園」です。依存症で壊れかけた人生が、教会で再生されると確信します。その奇跡を目撃することを切望しています。(金子香織)