脆弱性、頑健性、耐久性、反脆弱性

反脆弱性(はんぜいじゃくせいAnti-Fragile)とは、あまりに耳慣れない言葉です。私も初めて聞きました。

まずは「脆弱性」を押さえておきましょう。それは文字通り「脆(モロ)い」性質のことです。外から圧力を受けたり試練が来ると、すぐに壊れたりダウンして機能しなくなることを言います。訓練を受けていないとそうなります。

頑健性(ガンケンセイ)は、ストレスに強く、艱難を跳ね返していく力強さです。大水をせき止める堤防のようです。しかし、長期的には「金属疲労」を起こし、いつのまにか脆くなってしまいます。一見、頑健そうでも脆弱なものは結構多いですね。電気で動く便利な社会自体がまさにそうです。停電になれば役には立ちません。

耐久性は、試練に柔軟に対応して現状を守ります。しかし、守るだけで、それ以上のことはできません。 

しかし、反脆弱性は、外圧や苦難が来ると、かえって能力が高まっていくという性質です。抵抗できずに失敗するかもしれません。しかし、失敗の繰り返しによって学習し、創造性やパフォーマンスを高めることになります。人間の肉体もある程度の負荷をかけることで体力も増し、健康になります。負荷がかからないと衰退します。

「それだけではなく、苦難さえも喜んでいます。それは、苦難が忍耐を生み出し、忍耐が練られた品性を生み出し、練られた品性が希望を生み出すと、私たちは知っているからです。この希望は失望に終わることがありません。なぜなら、私たちに与えられた聖霊によって、神の愛が私たちの心に注がれているからです」(ローマ5:3-5)。

私たちの心も体も反脆弱性を宿しています。何もチャレンジせず、負荷のかからない安全志向の生活をしていれば、苦難は生じにくくなりますが、忍耐も練られた品性も希望も生み出されることはありません。

(川端光生)