秋雨前線で長らく雨が続き、その日は台風の影響で朝から土砂降りでした。小止みを狙っていましたが、見切りをつけて教会に向かいました。水たまりを避けて歩いても、すぐさま足元からズボンが濡れて、肌に冷たくくっつきます。地面を叩きつける音、傘にはじく音、林を鳴らす音に閉ざされました。
ところが、それをつんざくような声でミンミンゼミが唸り出しました。「今日はもう休んだら」と語りかけたくなるようながんばりようです。セミは地下で7年、地上に出れば7日が寿命、雨が降ろうが風が吹こうが休んではいられないのです。時を惜しんで、ミンミンゼミとしてなすべきことを成し遂げなければなりません。せっかくの7日間が秋雨と台風にぶつかってしまったことを嘆いても始まりません。それがこのミンミンゼミに与えられて生涯です。次の代に「遺伝子」を受け継がせるためには7日しかなく、休めばチャンスは過ぎていくだけです。
しばらく行くと、今度はモンシロチョウがよたよた飛んできました。「あんた、雨に打たれて大丈夫なの。小止みを待ったら・・」。でも、「この時でなければならない」というチョウにはチョウの都合、人間にはわからない事情があるのでしょう。
その日の午後遅く、西の空に晴れ間がのぞいて、まだ厚い雨雲が覆う東の空に虹をかけました。しかも、同心円状に二つ。一つは、端から端までくっきりとして色鮮やかでした。「自然」はいつまでも厳しいのではありません。なすべき時になすべきことをしていれば、微笑んでくれます。
ノアが地上に箱舟を造り、大洪水を生き抜いたのちに見た虹も主の微笑みの虹でした。「大洪水が地を滅ぼすことはない」という約束のしるし、恵みと祝福の虹です。
「わたしは雲の中に、わたしの虹を立てる。それはわたしと地の間の契約のしるしとなる」(創世記9:13)。主は、雨の後には虹を立ててくださる方です。
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