ある科学の本によれば、人間の脳に極小コンピュータをはめ込む研究が進んでいるのだそうです。それが実現すれば世界中の情報が瞬時に入手でき、国会図書館ほどの知識を脳に蓄えることも可能になります。となれば、アインシュタインなんてただの凡人です。しかも、コンピュータで脳を制御すれば、道徳心が向上して犯罪は減り、精神病は消え、うっかりミスの事故も激減します。もう勉強で苦労することも、外国語のマスターで苦しむこともありません。さらには、自分と同じ心を持った人間も造ることができ、本人が死んでもその心は永遠に生きます。こうして人間社会は平和になり繁栄します。それは人類の夢が実現する日です。
クリスチャンもすっかり変わります。まず聖書全巻を丸暗記できます。聖書を読む必要がなくなるどころか、聖書をそのまま実践できるので、みんなが聖人になれます。以前はどうしても赦せなかった人が赦せ、愛せなかった人が愛せるようになります。愛、喜び、平安、寛容、親切、善意、誠実、柔和、自制の心は自由に得られ、謙虚になることも思いのままです。感謝できないような事も容易に感謝でき、いつも喜んでいることができます。また、「死んでも生きる」ことが文字通り実現します。こんなことが聖霊ではなく、科学の力によって現実になる日が近づいているのです。
でも、科学者って、どうしてこんなに楽観的になれるのでしょうかね。神に届く塔を建て、人間の栄光を表そうとした「バベルの塔」と同じ発想です。昔から権力者や知識人らが夢のようなことを言っては、現実には悪夢のような世界を作り上げてきました。人間はまだまだ自分の心に巣食う罪の恐ろしさを知らないようです。
罪の問題は、絶対に科学の力では解消できません。人間が自分の知恵と力で良かれと思ってなすことが、気づかぬ罪の力で、どれだけ世界を不幸にしてきたことか。人間の傲慢さがしっぺ返しを受けなかったことがあったでしょうか。
人間の問題は罪の問題であって、脳の問題ではないのです。キリストの十字架の前にへりくだること以外に、未来はありません。
(2004-6-20)