室伏広治の改造

  オリンピックが近づき、代表選手たちは最後の調整に入っています。メダルが期待されるハンマー投げの室伏広治選手が米オレゴン州でコーチを受けている様子を、テレビで見ました。金メダルをとるためには84mを越えることが求められますが、今の回転フォームでは飛距離は伸びないとコーチのトガーは指摘します。体重と筋力で投げるヨーロッパの選手と同じようにしていては、彼の体格では勝ち目はありません。

  室伏選手のハンマー投げは4回転で、4回転目にトップスピードにもってこなければなりませんが、1回転目からスピードを出しすぎるのです。ゆっくり回転に入って急速のスピードを高めた方が遠くへ飛ぶというのが、コーチの理論です。それにしたがって練習を始めますが、長年体が覚えた投擲スタイルは崩せません。

  頭ではわかっていても体がついて来ないのだろう・・・と思いましたが、違いました。室伏選手はこう言いました。「体の苦痛はありません。今までのスタイルを捨てなければならないのが苦痛で、不安なのです。」

  新しいものを取り入れなければ、世界の頂点に立つことは至難です。しかし、古いものを捨てなければ、新しいものを体に取り入れることができません。しかも、それで記録が伸びるという保証はないのです。失敗した時、元のスタイルに戻れる保証もありません。トガーはアメリカで7回のオリンピックにわたって、選手を育ててきたコーチです。室伏選手は彼に信頼して前へ進んでいきます。

  今の限界を破って飛躍するためには、古いものを捨てなければならないというのは、私たちの生き方においても同じでしょう。私たちも、自分の体験や小さな頭で考えたことを越えて、聖霊に自分を委ねる訓練を何度も繰り返していく勇気を持ちたいと思います。

(2004-8-15)