野口みずき選手の金メダル

  オリンピック女子マラソンで「野口みずき金メダル」というのは驚かせました。失礼ながら、私は、自己ベスト記録で10分の差がある世界記録保持者ラドクリフと、7分差のヌデレバの二人にはとても勝てないと思っていました。

?平坦で気温が低い好条件なら、ラドクリフが圧倒的に有利です。しかし、今回は上り下りしかない険しいコースで、気温35度という条件でした。野口はこの過酷な条件を利用して、強者ラドクリフを打ち破りました。自分よりはるかに格下の野口について行けなかったラドクリフは、途中棄権に追い込まれ、その場で声を上げて泣いていました。「私は傷ついた」というコメントを残しています。それは、「私は、貧しさの中にいる道も知っており、豊かさの中にいる道も知っている。また、飽くことにも飢えることにも、富むことにも乏しいことにも、あらゆる境遇に対処する秘訣を心得ている」(ピリ4・12)というパウロの言葉を思い起こさせる光景でした。

?それにしても、慎重150センチ40キロの野口が、20センチも高いラドクリフによく勝ったものだと思います。なんと体脂肪率7%。骨折、失業という逆境の中でそこまで自分を鍛え、強靭な体をつくり上げました。これは、「闘技をする者は、あらゆることについて自制します。彼らは朽ちる冠を受けるためにそうするのですが、私たちは朽ちない冠を受けるためにそうする」(Iコリ9・25a)という言葉を思い浮かばせます。恵みによって永遠の命を受けた私たちは、主の栄光を表すためにそこまでの自制と努力をしているでしょうか。

?野口は、ラドクリフとヌデレバにはとても勝てないから銅メダルを狙い、あわよくば…などとは考えていませんでした。金メダルを取る作戦を立てていました。そのためには普通ならしない勇気あることをしています。ストライド(一歩の幅)を身長と同じに広げたり、ラストスパートの時間を終わりではなく中盤から始めるなどです。私も、今まで以上の何か思い切ったことを一つでもしなければ、今までと同じ程度で終わってしまうと思わさせられました。

  「勇敢でありなさい。わたしはすでに世に勝った」(ヨハ16・33)と言われる主の勝利を味わうために、ひそかに勇気ある作戦を考え、実行しませんか。

(2004-9-5)