現場主義

 昨年、米国人が思い浮かべる「ベスト・ブランド」で5年連続でトップに選ばれたソニーが、赤字転落したことは衝撃でした。ソニーは主力であったウォークマンを世界で1億台を売りましたが、それもアップル社の「iPod」の取って代わられました。まことに「奢る者久しからず」です。

 で、今、ソニーはどのように再建を図っているか。半年前に社長に就任した中鉢氏は、「ソニーは本来、愚直に食らいつく相撲を取ってきた。いつの間にか横綱気分になっていた」「とにかくトップが現場に行って、社員と喜怒哀楽を分かち合うことから再建は始まる」と、述べています。つまり、現場主義に立ち返ろうとしているのです。

 バブル崩壊後、経営難に陥った日本企業は、強力なCEO(最高経営責任者)の経営手腕に期待を寄せましたが、現場は厳しいリストラの波をかぶりました。カリスマに依存する組織は意外なほどもろいこともわかりました。長期的に見て現場を大切にするのが、着実な再建の道なのだろうと思われます(日経新聞060103参照)。

 ところで、キリストは人類救済の大事業において、まさに現場主義のお方です。神の子ですが、けっして上から教えを垂れたり命じたりするだけの方ではありませんでした。人となって庶民の間に住み、日常生活の喜怒哀楽を共にされ、愛を身近に示されました。キリストは教会の頭(かしら)ですが、へりくだり、仕える者となられ、ついにはご自身の命さえ捧げられました。そして今も、私たち一人ひとりのうちにあって、生きておられるのです。

  私たちの主は現場主義なのですから、教会も現場主義でいきます。主を高くて遠い方にしないで、「ともにおられる神」として、祈り、賛美し、親しく交わりましょう。誰もリストラされず、再建され、養われます。