東京出発の日は雨で寒かった。私たちが発つ日はいつも晴れる。それは神様からの出発ゴーサインに思われていつも励まされるのだが、この日は違った。神さまは、今日は背中を押してくれないのだろうか。
「お天気」さえも支配なさる創造主への信頼はかなり分厚い。小学1年生の運動会は日曜日で礼拝とかぶっていた。礼拝を休むなんてありえない。でも、リレーが大好きな私は、毎日正座して、目をギュッとつむり、手を胸の前で組んで必死に祈った。「日曜日には雨を降らせてください。」雨なら運動会は月曜日になる。日曜の朝、島根の空は快晴だった。運動会を知らせる花火の音が遠くにパンパンと響く。
一年のほとんどが雲に覆われる山陰。「弁当忘れても傘忘れるな」という格言があり、遠足も社会見学も参観日もいつも雨だった。なので突然の青空には驚く。言葉を失って空を見上げる私に、母は「さあ、感謝のお祈りをしよう」と言った。「あなたの祈りが聞かれなかったことは神さまの真実だね。みんな、お父さんやお母さんが参加できて嬉しいね。」
私はその日から天気の祈りをやめた。神さまは私にとって一番良いお天気にしてくださる。今日の天気は、私にとって一番良い。どう良いのかはわからないけど、一番良い。
朝、教会の奉仕を済ませて登校し、運動会の開会式に出たら、全速力で教会まで走る。運動着とハチマキのまま礼拝し、走って学校に戻り自分の種目に出た。お昼にはみんなが両親とお弁当を食べているのを横目に、父と母、祖母がお弁当を持って来るのを待った。
結果、私は礼拝も休まず、運動会も休まず、お弁当も家族で食べ、午後の組み対抗リレーを疾走した。誰よりも充実した一日を過ごした。 天気は最高!!以来、天気は私の上にいつも完璧なのだ。
雨の東京を出発して7日目、私たちは網走にいる。昨夜の山道では雪が降った。就寝時の外気は1度。今朝、網走湖畔で料理をしながら吐く息は白く、洗い物をする手は痺れた。2人とも真冬の肌着とダウン姿だ。不要と思ったネックウォーマーやカイロまで活躍している。
東京出発の日、重たい冬物や寝袋、かさばるものは全て置いていくつもりだった。が、翌日からは晴れて、途中の盛岡などは暑くて半袖になり、持ってきた冬物が鬱陶しかった。つまり、やっぱり出発の日の天気は「良い天気」だった。(川端真亜沙)