時に恵まれる

昨年、光速よりも速いかもしれないと話題になったニュートリノ。ニュートリノは宇宙から大量に降り注いでいて、私たちの体は1秒間に何十兆も浴びています。しかし、ほとんど質量がゼロの粒子で、すべての物質をすり抜けていきます。それゆえ自然には観測できないとされていました(実験室ではできる)。

それを世界で初めて捕らえたのが、物理学者小柴昌俊さんでした。自らが設計を監督したカミオカンデよって、宇宙で自然に発生したニュートリノを11個観測し、2002年にノーベル物理学賞を受賞しました。

11個のニュートリノは、宇宙のどこから来たのか。16万光年離れた大マゼラン星雲からだというのです。そこで起きた超新星爆発によって生じたものです。16万年前の話です。それが16万年かかって、ようやく地球に届いたときは、小柴さんが定年退官を迎えるわずか1ヶ月前でした。1987年2月23日午前7時35分35秒です。しかも、その発見の数ヶ月前に、カミオカンデの貯められた水を浄化する作業を行ったばかりでした。していなかったら不純物が妨害になって、ニュートリノは発見はされていなかったというのです(村山斉『宇宙は何でできているのか』幻冬舎新書等参照)。

準備して待っていたわけですから偶然とはいえませんが、小柴さんは強運の持ち主とはいえましょう。先週は、知力、論理力、計算力があっても、直感力、ひらめきの力がなければ、新しい世界は開けないと言いましたが、新発見にはさらに時の運も必要なのだろうと思います。でも、時の運を逃さないための努力と備えもしておかなければなりません。

慈しみと恵みは、ニュートリノのように、誰もが浴びています。それゆえ、私たちは、必要な時に必要な恵みを受け取る信仰を用意しておくべきなのです。その信仰がなければ、すべて私たちをすり抜けていきます。「私は神の恵みを無にはしません」(ガラ
2・21)という生き方をしましょう。